로그인さくらは食事を載せたカートを押していく。
長い廊下をゆっくりと進んでいき、食堂へと辿り着く。そこにはもう既に黒崎家一同が顔を揃えていた。
三人ともいつもの席へ座り、会話を楽しんでいるところだった。さくらは会話の邪魔にならないように静かに食事を配っていく。
この屋敷の主である智彦(ともひこ)、世界に名を轟かすほどの財力と権力を持っている。世界の経済を支える財閥のトップ。
少しふくよかで丸い体とチョビ髭が、強面とはギャップを感じさせ可愛さを演出している。智彦の向いに座っているのが長男の誠一(せいいち)。
彼は、頭脳明晰で戦略家。冷徹非道なところがあるが会社の業績を上げることに成功し、実力が認められ今は社長を任されている。 ルックスがいいこともあり、どこか冷たいその性格もクールだと好評で、雑誌などにイケメン社長などと取り上げられ女子人気は高かった。本人も会社のイメージアップに繋がると、ほくそ笑んでいるようだ。そして、智彦の隣に座っているのが、次男の聖。
富や名声、権力などにはまったく興味のない、温和で優しい人。お人好し過ぎるのが少し心配ではあるが、そこもまた彼の魅力だ。 彼もまた可愛らしい風貌で幅広い層から人気があった。さらに、その性格の良さから、男女問わず人気は高かった。聖はさくらの恩人であり、命より大切な人。
「おい、使用人!」
誠一の一喝でさくらは我に返り、急いで振り返った。
「はい!」
誠一が冷めた目つきでさくらを睨んでいる。
「落ちた、拾え」
誠一が顎で指し示した先には、ナプキンが落ちている。
さくらは下に落ちたナプキンを急いで拾うと、新しいナプキンを誠一に渡す。乱暴にさくらからナプキンを奪った誠一が、手で下がれと合図する。
しかしなかなかさくらが動かないので、不審に思った誠一がさくらを訝しげに見た。
「おい、おまえ、何をしている。下がれと言ったんだ」
普段なら大人しいさくらが、こんな不機嫌そうな誠一に意見するなどありえないのだが、その日は違った。
「あの……グラスをお取替えいたします」
「なぜだ?」 「グラスに汚れが」そう言われた誠一がグラスをよく見ると、薄く指紋の跡が見えた。
「ほう……おまえよく気が付いたな。
こんな薄い指紋、よほど近くなければ見えないぞ」さくらを怪しむような目で睨みつける誠一に、さくらの目が泳ぐ。
「私、目が良いので」
誠一の手からグラスを素早く回収し、新しいグラスを置いたさくらは速やかに下がっていった。
去っていくさくらの背中を見つめながら、誠一は思案する。
……あのメイド、たまに妙な言動を取ることがある。しかし、なぜかその後事態はいい方向へ転ずることが多い。
あいつ何かある……探ってみるか。
誠一はさくらが消えていった方を見つめ、楽しそうに微笑んだ。
長い廊下の壁にもたれかかりながら、さくらは息を吐いた。「誠一様、苦手だなあ」
あの場から逃げ出したさくらは、廊下の隅で一人愚痴る。
先ほど誠一に触れたとき、彼がグラスを持ち怒っている姿が頭に飛び込んできた。
それでグラスをよく見てみると、指紋があることに気づいたのだ。彼は潔癖でわずかな汚れさえ許さない。
もしグラスに指紋があり、それがそのまま誠一の手に渡っていたら、かなり激怒していたことだろう。さくらには未来が予知できる能力があった。
それは小さい頃、突然現れ、さくらを幾度となく救ってくれた。
もしかして、不遇な時代を乗り越えるために、さくらが生み出した能力なのかもしれないと考えていた。しかしどうすればこの能力が消えるのかはわからなかった。人に触れたときに見えることもあれば、突然何の前触れもなく未来が飛び込んでくることもある。
その内容は様々だったが、さくらに必要な情報を伝えてくれている気がしていた。この能力のおかげで、助かったことや役立ったこともたくさんある。
しかし嫌な思いをすることの方が多かった気がする。さくらの言葉や行動の意味がわからなくて人から気味悪がられたり、助けようとして反対に怒られたことも山ほどあった。
さらに、使い方次第で、この能力は人の運命も変えてしまうというリスクも背負っている。だからこの能力はさくらだけの秘密だ、誰にも知られてはいけない。
能力のことを悟られないようにいつも細心の注意を払っていた。もし、聖に知られたら……どう思われるのだろう。
そんなこと考えただけで恐ろしかった。絶対に知られないようにしなくては。
さくらは気合を入れるため、頬を軽く叩く。
「よしっ」
さくらは次の仕事へと向かっていった。
窓から外の景色を眺める。 白く小さな塊が、ちらちらと空から降りてくる。 今日は特に寒いと思っていたら、雪がちらつき始めていた。 さくらは懐かしそうに目を細めた。「私たちが出逢ったのも、こんな雪の日だった」 小さくつぶやくさくらを、聖は優しい眼差しでそっと見つめる。 肩を抱く手に、少しだけ力がこもるのを感じた。「そうだね、君と出逢ったから――“この子”もいる」 愛おしそうに見つめる先には、さくらの腕の中でスヤスヤと眠る赤ん坊。 聖が優しい手つきで赤ん坊を撫でる。「……優希(ゆき)」 さくらが囁くと、赤ん坊は笑った。「あ、笑った」 聖が嬉しそうにはしゃぐ姿を見て、さくらが可笑しそうに笑う。 そのとき、部屋の扉が勢いよく開いた。「おい、優希はいるか」 誠一が部屋に入ってくる。 彼は優希が生まれてからというもの、毎日のように訪ねてくるようになった。 優希が可愛くて仕方ないらしい。「優希、いつ見てもおまえは可愛いなあ、将来は美少女になるぞ」 優希の顔を眺めデレデレしている誠一の表情からは、昔の面影は微塵も感じられない。 いつも無表情で、怒っているような顔をしていたのに。「誠一さん、いつもありがとう」 「兄上、近づきすぎです」 二人のことなど目に入っていないかのように、誠一は優希に夢中だった。 聖と誠一が由紀の争奪戦を繰り広げていると、また扉が大きな音を立て開く。「おう、みんな揃っとるな」 今度は智彦が笑顔でこちらへ歩いてくる。 智彦も優希の顔を見ないと気が済まないらしく、毎日訪ねてきていた。「優希ちゃーん、おじいちゃんですよぉ。今日も一日元気でしたかぁ」 すっかり孫が可愛くてしょうがないおじいちゃんと化している。 優希を見る、その鼻の下は伸びきっていた。「お父様、いつも優希を可愛がってくださってありがとうございます」 さくらが智彦に微笑むと、智彦は嬉しそうに頬を染める。「いや、なんの。さくらと優希のためなら、私はなんでもするぞ」 智彦はさくらのことも可愛くて仕方がないらしい。 自分の妻と子に鼻の下を伸ばす父を見て、複雑な心境になる聖だった。 そして、また次の来訪者がやってきた。「優希様はまだ起きていらっしゃいますか?」 礼儀正しく一礼し、部屋へと入ってくる。 旭もまた優希の
午後のティータイムの時間。 さくらは聖の部屋で、紅茶を入れているところだった。 熱々の紅茶をポットからカップにゆっくりと注いでいく。 その様子を、聖はすぐ隣で嬉しそうに眺めていた。 ずっと見られていると、どうも落ち着かない。 さくらは聖を注意する。「聖様、そんなにいつも見られていては、仕事がやりにくいです」 そう言っても、聖は全然言うことを聞いてくれない。 常にさくらから目を離さず、じーっと見つめてくるのだ。「だって、さくら可愛いから。 それに、見張ってないと誰かに盗られるかもしれないだろ?」 ちょっと拗ねたように唇を尖らせる聖。 可愛いなと思いつつ、さくらは眉を寄せ、反論する。「誰が私を盗るっていうんですか? 私を好きって言ってくれるのは聖様だけですよ。 それに、私は誰のものにもなりません、聖様だけのものですから」 自信満々にそう言い切るさくらを、聖はあきれたように眺める。 さくらはわかっていないのだ、自分がどれほど魅力的か。 そして、聖のライバルがすぐ近くに二人もいるということも、ちっとも気づいていない。「さくらは鈍いからなあ」 「私のどこが鈍いのですか?」 少し頬を膨らませて怒るさくらに、聖は笑った。「そういうとこが」 聖は急にさくらを引き寄せ、自分の膝の上に座らせる。「ひ、聖様っ」 さくらが顔を赤らめ、聖の腕の中でもがく。「僕だけのさくら」 耳元で囁かれ、さくらがビクッと反応する。「さくら、耳感じるの?」 聖が面白そうに問いかけると、さくらの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。「そ、そういうこと言わないでください!」 「なんで? これからそういうことが大切なんだよ」 聖は楽しそうに笑っている。 そのとき、急にさくらの脳裏に映像が浮かんだ。
ある日の青天の午後。 太陽の光が燦燦と照りつける中、爽やかな風が洗濯物を揺らしている。「さくら、ちょっといいか?」 呼び止められたさくらは、洗濯物を干す手を止め、振り向いた。 ゆっくりと近づいてきた誠一が、さくらの横にそっと並ぶ。 何事かとさくらは大きな瞳で誠一を見つめた。「いろいろありがとう。父上のこと、聖のこと、あと……俺のことも」 さくらは不思議そうな顔をする。 智彦と聖のことはわかるとして、誠一に何かした覚えはない。 さくらが目をしばたたかせていると、誠一は急に吹き出した。「ははっ、そうだよな、なんのことかわからないよな。 ……それでいい。おまえはそのままで、いい」 誠一が優しい眼差しでさくらを見つめる。 最近の誠一は、以前に比べ、すごく穏やかな雰囲気をまとうようになってきていた。 これは嬉しい変化だと、さくらは密かに喜んでいる。「家のことは気にするな。 おまえたちが結婚したところで、黒崎家にはこの俺がいる。 いい嫁でも見つけて、この家を支えていくつもりだ。おまえらは自由にラブラブしてろっ」 誠一が嫌味っぽく笑うと、さくらは顔を赤くする。「な、何を……」 でもそれは、誠一なりの優しさだとわかっていたので、さくらは素直にお礼を言った。「ありがとうございます、お兄様」 冗談で言ったつもりだったが、誠一は真顔で黙ってしまう。 怒らせてしまったのかと、さくらは焦った。「す、すみません、調子に乗りました。最近の誠一様はお優しくなられたので、冗談も通じるかと」 さくらが慌てふためくその横で、誠一の頬がほんのりと赤く染まっていたことは誰も知らない。 屋敷には、いつもの日常の風景が戻ってきていた。 厨房で忙しく料理するコック、朝食の準備に走り回るメイドたち。 その中に、さくらの姿もあった。
そう言われた聖は不思議そうに首を捻る。「僕のせいなの?」 「聖様がお優しいから……」 さくらは聖の服をぎゅっと握る。 そんなさくらを、聖は愛おしそうに見つめていた。「僕はね、ずっと前から君の能力に薄々気づいていた。 まあ、決定打になったのは、今回の父上の件があったからだけど。 さくらはずっと僕のピンチを救ってくれていたよね? 気づかれないように気をつけていたみたいだけど、あんなに何度も助けられていたら鈍い僕だってわかるよ。 それでも、はっきりしたことはわからなくて、なんとなくそうかなって思ってた。 ……嬉しかったよ、いつも一生懸命に僕を助けてくれる君が、愛しくて、可愛かった。 一緒にいればいるほど、僕はどんどん君に惹かれていく自分をを止められなくなった。 誰よりも優しくて、一生懸命で、純粋で可愛いさくら……。 それなのに、なかなか打ち明けてくれないから、寂しかったな」 聖はさくらの髪に触れると、潤んだ瞳を向ける。 さくらもそれに応えるように、たどたどしく聖を見つめ返した。「聖様を失うぐらいだったら、今のままでいいと思ったんです。 言ったら嫌われてしまう、離れていってしまうと思っていたから。主と使用人という関係でも、例えどんな関係でも、ただお傍にいたかったんです」 さくらの瞳も潤み、艶っぽい輝きを含んでいた。 そんな瞳に見つめられた聖は、短い吐息をつく。「そんな瞳で見つめられると、我慢ができない」 さくらが何か言う前に聖はさくらの口を塞いだ。 聖の腕がさくらをきつく抱きしめ、彼女の動きを封じる。 別に抵抗するつもりもないので、さくらはそのまま聖に身をまかせた。 聖のキスが激しく深みを増していき、さくらは苦しそうに息を吐く。「ひ、じり……さまっ」 さくらの様子に、聖は唇を少しだけ離す。「さくら、可愛い……。先に進んじゃ駄目?」 聖が可愛く聞いてくる。
そして、聖はみるみる元気を取り戻していき、無事に退院することができた。 聖は話をするため、さっそくさくらを部屋に呼び出した。「さくら、まだメイドやめてなかったんだね」 メイド服姿のさくらを見て、聖がつぶやく。 さくらは聖の婚約者になったのだから、もうメイドでいる必要はなかった。「はい、だって何かしてないと落ち着かなくて。 いいんです、私はこの仕事が好きだから」 誇らしい笑顔を向けるさくらに、聖は嬉しそうに微笑み返す。「さくらがしたいなら、すればいいよ。僕もさくらのメイドは似合ってると思う」 しばしの沈黙の後、聖は急に真剣な表情になった。「さくら。……僕にずっと隠してることあるよね?」 ドキッとした。 さくらは高鳴る胸を抑え、必死に動揺を隠す。 しかし、もう言わなければいけない、それはさくらにもわかっていた。 意を決して、口を開く。「聖様、ごめんなさい、私――」 「未来が見える能力」 「え……」 「……だろ?」 さくらは驚いて聖を見つめる。「さくらが僕に何かを隠して苦しんでいるのはずっとわかってたんだ。言ってくれないことが寂しかったよ、信頼されていないのかって」 「そんなことっ」 「わかってる。恐くて言えなかったんだろ? 僕に嫌われるんじゃないかって」 さくらは聖のことを真っ直ぐに見れず、視線を逸らしながら頷いた。 聖が能力のことをどう思っているのかが気になる。 戸惑うさくらの腕を掴み、聖がさくらを引き寄せる。 さくらは聖の腕の中にすっぽりと収まった。「馬鹿だな……。僕がさくらを嫌うと思う? 離れていくと思う? それは絶対にない。 ――反対に考えてみて、僕がもしその能力を持っていたとしたら、君は僕を嫌いになって離れていくの?」 聖の問いに、さくらはおもいきり頭を横に振る。「いいえ! 聖様のことを嫌うなんてありえません。
「ん……」 さくらが目を開ける。 すると、いつもそこにあった聖の顔が無い。変わりに上半身が目に飛び込んできた。 慌てたさくらが上を向くと、優しく見下ろす聖の視線とぶつかる。 さくらは驚き、口をぽかんと開いた。「ひ、聖……様」 さくらは聖を穴が開くほど見つめ、震える手で聖の頬に触れる。 聖はその上からさくらの手にそっと触れた。「さくら……」「聖様!」 さくらが勢いよく聖に抱きつく。「よかった。――聖様っ、よかったあ!」 泣き喚くさくらを、聖は宥めるように優しく抱きとめた。「さくら……君が無事でよかった」 さくらの泣き声が響き渡る中、旭が聖に声をかける。「お目覚めになったのですね、本当によかった」 心からほっとしたような表情を見せる旭に、聖も微笑みを返す。「ああ、世話をかけたな。旭もいろいろありがとう」 穏やかに微笑む聖は、愛しそうにさくらを見つめる。 泣きじゃくるその背中を、ただ優しく撫で続けていた。 聖が目を覚ましたことを聞きつけた誠一と智彦が、急いで病院へ駆けつける。 先に着いたのは誠一。 誠一は聖を見ると、ほっと胸をなでおろし微笑んだ。「よく、頑張ったな」 誠一に褒められたことなんてなかった聖は、頬を染めながら嬉しそうに微笑む。「心配かけてごめん、ありがとう」 聖が可愛い笑顔を向けると、誠一もはにかんだように笑った。 次に病室に飛び込んできたのは智彦だった。 智彦は聖を見るなり、さくらと同様いきなり聖を抱きしめてきた。「聖! よく耐えたな。 ……生きていてくれてありがとう。いろいろすまなかった!」 大の男
次の日から、さくらは誠一専属のメイドになった。 誠一は、智彦にさくらを自分の専属にしたいと頼み込んだ。 聖のお気に入りであるさくら。誠一専属にすることを智彦はなかなか承諾しなかった。 しかし、誠一の熱意に負けた智彦は、しぶしぶ承諾してしまう。 誠一からさくらに強要されたのは一つ。 仕事に付き添い、そこで会う人たちの未来が見えたとき、誠一に報告すること。 ライバル企業や取引先、誠一にとっての重要人物たち。 誠一は毎日さくらを連れまわし、その人物たちに会わせていく。 さくらは
誠一に呼び出されたさくらは、彼の部屋へ向かっていた。 なぜ誠一に呼び出されたのか、見当がつかない。さくらの心の中は不安が渦巻いていた。 さくらは誠一が苦手だ。 どこか近寄りがたくいつも不機嫌そうな彼は、人を寄せつけないオーラを放っている。 さくらのことも嫌っているように感じられた。「さくらです、失礼いたします」 部屋に入ると、誠一が椅子に腰かけ足を組み、鋭い眼差しでこちらを睨んでいた。 さくらはなんだか蛇に睨まれているような感覚に陥り、逃げ出したくなった。が、引き返すことはできな
毎朝、黒崎家の面々が出勤していく時間。 玄関の前に黒塗りの高級車が二台待機していた。 まず最初に誠一が車に乗り込み出ていくのを、執事の旭とメイドたち数人がお見送りする。 次に智彦が出ていくのを同じように見送る。 その後、聖が徒歩で出かけていくので、その姿が見えなくなるまで皆で見送った。 聖が学校へ徒歩で行くことを、智彦は気に食わないようで、いい顔をしなかった。 始めは注意したが、聖は歩いていくことに彼なりの考えがあるようで譲らない。 そのうち智彦も聖の頑固さに折れ、容認するようになった。「いってらっしゃいませ」 いつものように三人を送り出したさくらは、急いで制服に着
その日は雪が降っていた。 雪はしんしんと降り続き、少女の小さな体に降り積もる。 少女は冷たい手を暖めたくて、はあっと息を吐いた。 全身氷のように冷たくてもう動く気にもなれず、少女はその場にしゃがみ込んだ。 なんだか眠くなってきて、そのまま寝てしまおうかとゆっくりと瞼を閉じていく。「大丈夫?」 ふと声がする。とても穏やかで優しい声。 そっと瞼を開くと、少年がこちらを見ていた。「こんなとこで寝ちゃ駄目だよ、お家はどこ?」 少年の澄んだ瞳とその可愛らしい容姿から、天使が舞い降りてきたのかと思ってしまった。「私に家はないの、帰るところなんてない」 少女の瞳は虚ろだった。